お客様事例

株式会社大林組様(開発ストーリー)

GenVital LTE 開発ストーリー

「GenVital LTE」は、株式会社大林組様の体調管理ソリューション「Envital(エンバイタル)」より引き継がれて誕生しました。
製品化に至るまで、独自のアルゴリズムの開発や、通信環境の改善など、裏側には数知れない試行錯誤がありました。
幾多の困難をどう乗り越え、どのように今の形へと進化を遂げたのか。熱中症ゼロの実現に向けて歩んできた、「GenVital LTE」誕生の軌跡をご紹介します。

暑熱対策が高まる10年前、一着のシャツから始まった挑戦

——GenVital LTEが製品化されるまでには、大林組様による10年もの研究期間があったと伺っています。まずはその原点から教えていただけますか。
赤川様:私は元々気象学が専門で、大林組の技術研究所で30年ほど、暑熱対策や建物の緑化といった環境工学の研究をしてきました。熱中症対策のプロジェクトが始まったのは2015年頃です。当時はまだ「バイタルセンシング」という言葉も一般的ではありませんでしたが、現場作業員の高齢化や健康問題が顕在化し始めていた時期でした。

実証実験で使用したシャツ型センサー
(大林組様提供)

——2015年というと、今ほどスマートウォッチも普及していない頃ですよね。
赤川様:そうですね。当時は「暑さ指数(WBGT)」を一箇所で測るのが現場の標準でしたが、それだけでは不十分だと感じていました。そこで最初に取り組んだのが、なんと「シャツ型」のセンサーだったんです。心電波形まで取れるような非常に高精度なものでしたが、これがまあ、現場では大変でして(笑)。
和久様:あのシャツは苦労されたのですよね?
赤川様:ええ。データを取るには体に密着させないといけないので、作業員さんに「ぴったり着てください」とお願いするのですが、これが嫌がられる。さらに汗をかくので1人3〜4枚は必要になりますが、その洗濯を誰がするのかという問題も出ました。結局、「現場の運用コストが高すぎて普及しない」という苦い教訓を得て、リストバンド型へと舵を切ることになったんです。

独自のアルゴリズム。なぜ「オオカミ少年」にならないのか

——そこからリストバンド型への移行と同時に、独自のアルゴリズム開発が進んだのですね。特に赤川様がこだわられた「ロジック」について詳しく教えてください。
赤川様:バイタルセンサーで一番の問題は、アラートが出過ぎて「オオカミ少年」になってしまうことです。少し階段を登っただけで鳴ってしまうと、誰も信じなくなります。これを解決するために、私たちは労働安全衛生総合研究所という厚労省所管の機関と共同研究を行い、医学的・工学的な根拠を積み上げていきました。
——具体的には、どのような計算を行っているのでしょうか。
赤川様:ベースにしているのは、暑熱環境下での「心拍数と年齢」の関係式です。ただ、既存の数式をそのまま当てはめてもうまくいきません。現場で働く方々は日々体を鍛えていますし、ベテランは自分のペースを調整するのが非常に上手いです。そこで、私たちは蓄積した膨大なデータから、建設作業員特有のボリュームゾーンを特定し、独自の「チューニング」を施しました。
和久様:赤川さんの作ったロジックは、WBGT(環境)と心拍数(身体)をセットで見ていますよね。
赤川様:そこが重要なんです。涼しい場所で心拍数が上がっても、それは熱中症ではないかもしれない。環境側の数値と連動させ、ロジックをブラックボックス化せずに「なぜ今アラート状態なのか」を明確にした。これが現場に納得感を与え、信頼されるアラートに繋がったのだと考えています。

株式会社大林組
技術本部 未来技術創造部長
博士(工学) 赤川 宏幸 様
30年の環境工学研究を経て、未来技術創造部にて将来事業の探索を行う。暑熱対策や建物緑化などの知見を活かし社会課題解決を推進中。

「Envital」から「GenVital」へ。そして「LTE」への進化

株式会社大林組 
土木本部 本部長室 生産企画第二部
情報企画課長 和久 雅也 様
土木本部にて施工現場のICT活用を推進。ツール導入による生産性向上や業務効率化を担い、施工管理技術の普及・指導に従事。

——研究開発された製品は「Envital」として運用されました。2023年、その大切な技術がGRIFFYに引き継がれました。どのような心境でしたか?
都鳥:正直、プレッシャーしかありませんでした(笑)。大林組様が長年築き上げた、既に実績のあるシステムを預かるわけですから。「失敗して製品を終わらせてはいけない」という一心で、和久さんたちと現場での試験を繰り返しました。
和久様:当時はBluetooth版でしたが、広大な土木現場では「中継機」の設置が大きな課題でしたよね。
都鳥:はい。和久さんから「中継機の移設手間が現場の負担になっている。どこでも繋がるLTE版にできないか」と強く背中を押されました。それがGenVital LTE開発への大きな転換点になりました。
和久様:中継機の死角に入るとデータが途切れてしまう。それでは作業員の安全を守りきれません。「電源を入れれば、即座にクラウドへ繋がる」というシンプルさは、現場の所長たちからも強く求められておりました。

GenVital LTEの仕組み

数値が変えた「安全管理」のあり方

——満を持して2025年5月にGenVital LTEはリリースしました。実際の現場ではどのような変化がありましたか?
和久様:運用面でも大きな進化がありました。以前はメール通知だけでしたが、今は企業用チャットツールと連携しています。アラートが出るとグループ全員に即座に通知が飛ぶ。近くにいる人がすぐに声をかけ、「心拍数が戻るまで休ませる」という具体的な運用ができるようになりました。
都鳥:2025年度は、約2500名の方に利用いただきましたが、熱中症の発症率は約0.4%に抑えられています。Envitalの原理を継承し、LTEで確実にデータを捉え続けた結果だと思っています。
赤川様:データを見ると面白いことが分かります。体調が優れない人は、朝のラジオ体操の時点でバイタルが通常時と明らかに違う。これを見れば「君は今日は少し無理をしないほうがいい」などの応用ができ、アラートが出る前の安全対策に役立てられます。

株式会社GRIFFY
企画部 製品開発グループ
グループリーダー 都鳥 真也

大林組様の体調管理ソリューションの開発から「GenVItal LTE」リリースまでの変遷

課題解決は「現場」にある。GenVItal LTEの向かう未来像

——今後、GenVItal LTEをどのように発展させていきたいとお考えですか。
都鳥:現在は熱中症対策がメインですが、転倒検知やSOS発信、メッセージ機能も追加しました。将来的にはAIを活用し、本人が自覚する前に「今日はリスクが高い」と予見できるようなシステムを目指しています。
和久様:顔認証システムと連携して人物の特定を簡易化できる仕組みができたら、より便利になると考えてます。コストの課題もありますが、年間で使えるものにしたいですね。そのためには熱中症だけでなく、日々のストレスチェックや二日酔いなど(笑)、個人の健康管理に役立つツールになれば、業界のスタンダードになれるはずです。
赤川様:GenVItal LTEを通じて「自分の体の状態」を客観視する習慣がつけば、ヒューマンエラーによる事故も防げるかもしれませんね。技術開発側は頭でっかちになりがちですが、やはり「現場」が何より重要です。常に現場に解決策が落ちているという意識を持って、これからも進化させていきたいですね。

株式会社大林組様

創業
1892年1月
事業内容
総合建設業として、国内外の建築・土木工事の企画・設計・施工を主軸に、不動産開発、都市再開発、再生可能エネルギー等の新領域ビジネスまで幅広く展開
URL
https://www.obayashi.co.jp/

※本事例の内容は2026年3月公開当時のものです。本事例の内容は公開当時より変更されている場合がありますので、予めご了承ください。

             

製品情報

  • GenVital LTE

    NETIS技術名称:現場作業員向け体調管理システム
    「GenVital LTE」はリストバンドにより収集された現場作業員の心拍数と位置情報、建設現場内の暑さ指数から、株式会社大林組が開発した体調管理判定アルゴリズムにより計算された指標が閾値を超えた場合に、瞬時に作業管理者と作業員本人に警報アラートを通知することで、現場作業員の体調管理をサポートするソリューションです。