熱中症対策の費用は誰が持つか(現場管理費の補正・現場環境改善費・補助金)

公共工事で熱中症対策の費用を計上する2つの仕組み
国土交通省の直轄工事では、熱中症対策の費用を2つの仕組みで工事費に計上できます。①作業員一人ひとりに使う対策の費用を、真夏日の日数に応じて現場管理費の率に上乗せする「現場管理費の補正」と、②現場の施設や設備による対策の費用を積み上げて計上する「現場環境改善費」です。多くの自治体も、同じ形の試行要領を定めています。
関東地方整備局の運用資料では、2つの仕組みを次のように分けています。
| 現場管理費の補正 | 現場環境改善費の積み上げ | |
|---|---|---|
| 始まった年度 | 令和元年度から | 令和7年度から(令和8年度に拡充) |
| 主な対象 | 作業員一人ひとりに使う対策 | 現場の施設や設備による暑さを避ける対策 |
| 例 | 塩飴、経口補水液などの飲料、空調服、熱中症対策キット | 遮光ネット、大型扇風機、送風機、製氷機、日除けテント、ミストファン、休憩用の車両の配置 |
| 計上のしかた | 現場管理費の率に、真夏日の日数に応じた補正値を足す | 対策が妥当かを見積書で確かめたうえで、設計変更で積み上げる |
どちらを使えるか、どの条件で使えるかは、発注者ごとに異なります。工事ごとの特記仕様書と、発注者の要領を確かめてください。
現場管理費の補正の計算のしかた
工期のうち真夏日が占める割合(真夏日率)に、補正係数1.2を掛けた値を、現場管理費の率に足します。補正は変更契約で行います。
- 現場管理費 = 対象純工事費 ×((現場管理費率 × 地域補正係数)+ 補正値)
- 補正値(%)= 真夏日率 × 1.2
- 真夏日率 = 基準日から工期末までの真夏日の日数 ÷ 工期
例えば、工期100日のうち真夏日が30日なら、真夏日率は0.3で、補正値は0.3 × 1.2 = 0.36%になります。
真夏日と工期の数え方
- 真夏日:日最高気温が30度以上の日、または暑さ指数(WBGT)が日最高25度以上の日です。休工日は数えません。夜間工事は、作業時間帯の最高気温が30度以上、または暑さ指数が25度以上の日を数えます。
- 基準日:受注者と発注者が話し合って決めます。工事着手日が基本です。
- 工期:工事着手日から工事完成日までです。年末年始の6日間、夏季休暇の3日間、工場で製作だけをしている期間、工事全体を一時中止している期間は除きます。
受注者がすること(千葉県の試行要領の例)
- 契約後すぐに、試行を適用するかを監督職員と打合せ簿で協議します。
- 施工計画書に、真夏日を確かめる観測地点を書きます。現場に最も近い気象庁の地上気象観測所と、環境省が暑さ指数を公表している観測地点です。
- 現場の作業が終わったら真夏日を集計し、真夏日率とその根拠を打合せ簿に添えて協議します。
緊急工事の補正など、ほかの補正と重なる場合、現場管理費の補正は合わせて最高2%までとされています。
現場環境改善費では、何をどこまで計上できますか
関東地方整備局の運用では、遮光ネットや大型扇風機など、主に現場の施設や設備による熱中症対策を、見積書で妥当性を確かめたうえで設計変更で積み上げます。上限は、入札書の提出期限が令和8年4月1日以降の工事で率計上額の100%、令和7年4月1日以降の工事で50%です。
- ここでいう「妥当性」は、冷やす効果を数字で示すことではなく、高すぎる製品や多すぎる数量になっていないかを見ることです。見積書で確かめ、請求書や領収書までは求めないとされています。
- 入札書の提出期限が令和7年3月31日以前の工事は、率計上(安全関係の「避暑・防寒対策」に含む)です。
- 積み上げるときは、共通仮設費の安全費・営繕費や、現場管理費に入る作業員個人の費用と重ならないことを確かめます。
暑さのリスクを工事の前に調べて発注者に説明する資料が必要な場合は、国土交通省の「建設工事における猛暑対策サポートパッケージ」に対応した「猛暑・熱中症対策サポートプラン」があります。過去5年分の暑さ指数の解析と気象予報士の解説レポート、気象予報士の判断による注意喚起メール、シーズン後の振り返りレポートを提供します。
民間工事での熱中症対策の費用の考え方
民間工事には、公共工事のような決まった補正の仕組みはなく、注文者との契約で決めます。厚生労働省のガイドラインは、夏の屋外作業を注文する人は、経費や工期・納期に配慮することが望ましいとしています。
同じガイドラインは、注文を受けた側も、作業中に休憩や水分補給をすることがあると、あらかじめ注文者や作業場所を管理する会社に伝えておくことが望ましいとしています。見積や工程の打ち合わせの段階で、熱中症対策の費用と休憩の時間について話しておくことが考えられます。
熱中症対策に使える補助金はありますか
国の補助金では、厚生労働省の「エイジフレンドリー補助金」に熱中症対策コースがあります。令和8年度は、60歳以上の労働者が働く中小企業を対象に、体を冷やす装備や機器、熱中症の兆しをつかむウェアラブルデバイスによる健康管理システムなどの導入費用の2分の1を、100万円(税抜)まで補助します。
| 項目 | 令和8年度の内容 |
|---|---|
| 対象になる会社 | 1年以上事業をしていて、役員を除き、労災保険が適用される60歳以上の労働者が常時1人以上働いている中小企業 |
| 補助率と上限 | 2分の1、上限100万円(消費税を除く) |
| 対象になるもの | 体温を下げる機能のある服や装備/移動式のスポットクーラー(熱を外へ逃がせるものなど条件あり)/アイススラリーや保冷剤を冷やす専用の冷凍ストッカー/ウェアラブルデバイスによる健康管理システム |
| ウェアラブルデバイスの条件 | 本人だけに知らせるものではなく、通信で集中して管理できること。熱中症に関する異常を感知することが目的で、深部体温を推定できる機能があるものに限る |
| 対象にならないもの | 暑さ指数計(令和8年度)、保冷剤やアイススラリーそのもの、扇風機や送風機、物品のリースの代金 |
| 申請の受付 | 令和8年5月20日から11月20日まで(10月31日から延長)。予算に達すると途中で締め切ることがある |
交付が決まる前に発注した場合や、取り組みが全部終わる前に代金を払った場合は、補助を受けられません。補助の中身は年度ごとに変わるため、申請の前に厚生労働省のリーフレットとQ&Aで最新の条件を確かめてください。
よくある質問
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空調服の費用は、現場管理費と現場環境改善費のどちらに入りますか?
関東地方整備局の例示では、空調服は作業員一人ひとりに使う対策として、現場管理費の率計上(真夏日の補正)に入ります。遮光ネットや大型扇風機など現場の設備による対策は、現場環境改善費の積み上げです。
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真夏日は、現場で測った値で数えますか?
千葉県の試行要領では、現場に最も近い気象庁の地上気象観測所の日最高気温と、環境省が公表している最寄りの観測地点の暑さ指数で数えます。どの観測地点を使うかは、施工計画書に書きます。
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特記仕様書に補正の記載がない工事でも、補正を受けられますか?
千葉県の試行要領では、特記仕様書に記載がない工事でも、発注者から対象になると知らせがあり、受注者が希望する場合は、監督職員と協議して適用できるとしています。扱いは発注者ごとに違うため、発注者に確かめてください。
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暑さ指数計は、エイジフレンドリー補助金の対象になりますか?
令和8年度は対象外です。
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すでに買った機器で、あとから補助金を申請できますか?
できません。エイジフレンドリー補助金は、申請して交付が決まったあとに発注し、取り組みが全部終わってから代金を払う必要があります。
出典
- 国土交通省 関東地方整備局「関東地方整備局発注工事の熱中症対策に係る積算等における運用について」
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000951134.pdf - 千葉県 県土整備部「熱中症対策に資する現場管理費の補正の試行要領」(令和8年8月4日施行)
https://www.pref.chiba.lg.jp/gikan/nechushou/documents/202608-shikouyouryou.pdf - 厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」(令和8年3月)
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001676141.pdf - 厚生労働省「令和8年度エイジフレンドリー補助金のご案内」(リーフレット)・「エイジフレンドリー補助金 Q&A」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09940.html - 製品の仕様は、製品ページの掲載内容によります。
このページは2026年11月時点の公表資料をもとに株式会社GRIFFYが作成しました。積算の扱いと補助金の条件は、発注者・年度ごとに変わります。実際の工事では、特記仕様書、発注者の最新の要領、補助金の最新の案内を確かめてください。





